職場やママ友の集まりで遭遇する「マウンティングおばさん」。夫の年収や子どもの学歴、海外旅行の話を延々と聞かされて、うんざりした経験がある方も多いのではないでしょうか。
一般的なアドバイスでは、こうした人とは距離を置き、話は適当に聞き流し、感情的にならないようにすることが推奨されています。確かに、それも一つの方法かもしれません。
しかし、実際にマウンティングおばさんとの関係に悩んでいた人たちの中には、まったく逆のアプローチを取ることで、驚くほど良好な関係を築き、むしろ人生にプラスの影響を受けた人たちがいます。今回は、そんな逆説的な成功例についてお話ししていきたいと思います。
まず、「距離を置く」というアドバイスについて考えてみましょう。
確かに、苦手な人との関係は避けた方が楽に感じます。でも、職場やコミュニティで完全に距離を置くことは現実的に難しいケースがほとんどです。無理に避けようとすることで、かえって気まずい雰囲気が生まれ、その緊張感がストレスになることもあります。
むしろ、あえて近づいてみることで、相手の見え方が変わることがあります。マウンティングする人の多くは、実は深い不安を抱えていることが少なくありません。表面的な自慢話の裏には、認められたい、理解されたいという切実な願いが隠れていることがあるのです。
化粧品メーカーで働いていた女性の話をご紹介します。彼女の部署には、何かにつけて自分の夫の会社や息子の進学先を自慢する五十代の女性がいました。最初は周囲と同じように距離を置こうとしていましたが、ある日、思い切って彼女にランチに誘ってみたそうです。
最初はいつものように自慢話が続きましたが、彼女が「お子さんの受験の時、大変だったでしょう」と聞いてみると、その女性の表情が少し変わりました。そして、受験期間中の苦労や不安、夫があまり協力的でなかったことなど、それまで見せなかった本音を少しずつ話し始めたのです。
「自慢話の裏には、誰にも言えなかった孤独があったんだと気づいた」と彼女は振り返ります。その後、二人の関係は大きく変わりました。マウンティングおばさんと思っていた女性は、実は話し相手を求めていただけだったのです。距離を縮めることで、彼女の自慢話は徐々に減り、むしろ仕事の相談をし合える関係になったそうです。
この経験が教えてくれるのは、距離を置くことで相手を「敵」として固定化してしまう危険性です。近づいてみることで、相手の人間的な側面が見えてきて、関係性そのものが変化することがあるのです。
次に、「適度にスルーする」というアドバイスについても別の視点から見てみましょう。
話を聞き流すことで相手の期待を裏切る、という戦略は一見理にかなっているように思えます。しかし、これは相手との関係を「戦い」として捉えている考え方です。相手を打ち負かそうとする姿勢は、知らず知らずのうちに自分自身もネガティブな感情に巻き込んでいきます。
むしろ、相手の話に心から興味を持って耳を傾けてみるとどうでしょうか。自慢話であっても、その中には相手の価値観や人生観が反映されています。それを理解しようとする姿勢を持つことで、相手との関係は大きく変わることがあります。
不動産会社で営業をしていた女性は、顧客の中にいわゆるマウンティングタイプの女性がいました。高級マンションの購入を検討している彼女は、現在住んでいる家の広さや所有している車、夫の役職などを事あるごとにアピールしてきました。
普通なら聞き流すところですが、この営業の女性はあえて「すごいですね、どうやってそこまで成功されたんですか?」と興味を持って聞いてみたのです。すると、その女性は嬉しそうに自分のキャリアや苦労した時代の話を始めました。
話を聞いているうちに、彼女が専業主婦から起業して成功したこと、その過程で多くの挫折を経験したこと、周囲から認められるまでに長い時間がかかったことがわかってきました。自慢話に見えていたものは、実は彼女なりの成功体験の共有だったのです。
「彼女の話を本気で聞いたことで、信頼関係が生まれた。結果的に、彼女は私を指名して何件も契約してくれるお得意様になった」とその営業の女性は語ります。
この事例から学べるのは、聞き流すことで失われるものの大きさです。相手の話に真剣に向き合うことで、表面的な関係を超えた深いつながりが生まれることがあるのです。
「嫌だと伝える」というアドバイスについても、異なる視点から考えてみたいと思います。
直接的に否定することは、確かに関係を悪化させるリスクがあります。しかし、問題はその伝え方だけでなく、「否定する」という姿勢そのものにあるのかもしれません。
相手を否定するのではなく、むしろ肯定してみる。自慢話に対して「それは素晴らしいですね」と心から伝えてみる。この姿勢が、意外にも相手の行動を変えることがあります。
学習塾を経営していた女性は、保護者の中にいつも自分の子どもの成績や習い事の数を自慢する母親がいました。他の保護者からは敬遠されていたその女性に対して、塾長である彼女はあえて「お子さんの教育にそこまで熱心なのは本当に素晴らしいことですね」と伝えました。
最初、その母親は少し戸惑った様子でしたが、次第に表情が柔らかくなっていきました。そして「でも、正直疲れることもあるんです」と本音を漏らし始めたのです。彼女が求めていたのは、自分の努力を誰かに認めてもらうことだったのです。
それ以来、その母親のマウンティング的な発言は明らかに減りました。認められたという安心感が、彼女の防御的な姿勢を解いたのかもしれません。「肯定されることで、もう自慢する必要がなくなったのだと思う」と塾長は分析しています。
この経験が示しているのは、マウンティングの根底にある「認められたい」という欲求に応えることの力です。否定や無視ではなく、肯定することで、相手の行動そのものが変化することがあるのです。
「感情をコントロールする」というアドバイスについても、少し違った角度から見てみましょう。
冷静でいることは確かに大切です。しかし、常に感情を抑え込んでいると、自分自身が疲弊していきます。また、感情を見せないことで、相手との間に壁ができてしまうこともあります。
むしろ、自分の感情を適切に表現することで、相手との関係が良くなることがあります。嬉しい時は嬉しいと伝え、困った時は困っていると伝える。その素直さが、相手の心を開かせることがあるのです。
アパレル会社で働いていた女性は、上司である五十代の女性からのマウンティングに悩んでいました。会議のたびに自分の過去の実績を語り、若手社員の意見を軽んじる態度を取る上司。彼女は最初、感情を抑えて冷静に対応しようとしていました。
しかし、ある日、プロジェクトの提案を却下された時、思わず「私なりに一生懸命考えたので、少し悔しいです」と素直に伝えてしまいました。怒られると思った彼女でしたが、上司の反応は意外なものでした。
「そうよね、あなたも頑張ってたものね。ごめんなさい、私の言い方が悪かったわ」
その上司は、自分の態度を振り返り、謝罪してくれたのです。それ以来、上司は彼女の意見に耳を傾けるようになり、二人の関係は大きく改善しました。
「感情を見せたことで、上司も人間らしい反応を返してくれた。お互いに鎧を脱いだ感じがした」と彼女は振り返ります。
この事例から学べるのは、感情を抑えることで失われるコミュニケーションの可能性です。適切に感情を表現することで、相手も自分の感情と向き合うきっかけになることがあるのです。
ここまで、従来のアドバイスとは逆のアプローチについてお話ししてきました。
大切なのは、マウンティングおばさんを「敵」として見るのではなく、同じ人間として理解しようとする姿勢かもしれません。彼女たちの多くは、何らかの不安や孤独を抱えています。自慢話は、その不安を紛らわせるための防衛手段であることが少なくありません。
距離を置いて自分を守ることも一つの選択です。でも、あえて近づいてみることで、相手の見え方が変わり、関係そのものが変化することもあります。マウンティングおばさんだと思っていた人が、実は心を開いてくれる友人になることだってあるのです。
もちろん、すべてのケースでこのアプローチがうまくいくわけではありません。本当に悪意を持って攻撃してくる人に対しては、距離を置くことが最善の選択である場合もあります。
しかし、多くの場合、私たちが「マウンティング」だと感じている行動の裏には、単純に「認められたい」「話を聞いてほしい」という人間らしい願いが隠れています。その願いに応えてあげることで、相手の行動が変わり、結果的に自分自身も楽になることがあるのです。
マウンティングおばさんに出会った時、まずは一度、相手の立場に立って考えてみてください。彼女は何を求めているのか、なぜそのような行動を取るのか。その理解があれば、対処法は自然と見えてくるかもしれません。
人間関係は、どちらか一方が「勝つ」ものではありません。お互いが理解し合い、認め合うことで、より良い関係が築けるのだと思います。マウンティングおばさんとの関係も、その例外ではないのです。
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